2023年の印象に残ってる本一言紹介
2023年も12月末になりましたね。下半期の見たり読んだりメモは年明けに投稿するとして、とりあえず今年印象に残ってる本の紹介をしてみたいと思います。忘却には自信のあるわたしが覚えているくらいの本なので、おそらくそれなりに面白いのではないかと思います。参考になれば。
『靴ひも』ドメニコ・スタルノーネ https://amzn.asia/d/a7htYay
今年最初に読んでめちゃくちゃドーンときた本。そのほとんどが自己弁護と自己正当化で構成されていて、読んでいてイヤーッとなります。でも読後感はかなり◎。毒親持ちの方は読んでるとまじで気分悪くなる可能性が高いのであまりおすすめはしません。
『常識のない喫茶店』僕のマリ https://amzn.asia/d/eprxbWH
はたらくひとみんな読んでちょっとだけでも気分が楽になってほしい。作者さんも日常を面白おかしく切り取ってはいるけれど、かなり大変だったのではないかと推察します。楽しさが大変だを上まわる瞬間を見せてくれるような優しいエッセイ本。
『よぎりの船』小田雅久仁 https://amzn.asia/d/3QUmr8X
2018年刊行のファンタジーアンソロジー『万象』の中の一編。電子書籍のみ。「『万象』をお持ちの方は購入する必要はありません」と書かれていますが、『万象』も電子書籍のみのため(https://amzn.asia/d/3u8kMwC)、他のも気になる方はこちらを購入した方が良いかと。幻想的な世界観がくせになります。
『スモールワールズ』一穂ミチ https://amzn.asia/d/ep0plOY
本屋大賞第3位、吉川英治文学新人賞受賞の名に恥じぬ良作。短編集。ひとつずつの作品の完成度も、最後に“小さな世界”が完成する構成にも舌を巻きました。他の作品を読んだことないのですが、この本に含まれている「魔王の帰還」は漫画にもなっています(https://amzn.asia/d/4Fxlrab)。こっちは読んでないけどここからはいるのもありかと。
『現代奇譚集 エニグマをひらいて』鈴木捧 https://amzn.asia/d/g2Rfgn3
実話怪談本。電子書籍のみ。実話怪談本はたいてい作者がそれぞれの話にタイトルをつけるのですが、この本はそれが一切なし。番号のみという潔さ。「最後に」にあとがきと共にあえてつけるのなら、というタイトルが付されていますが、
タイトルがあることで、読書体験がどこか「答え合わせ」のようになってはいないか。タイトルというものが体験談に書き手の意図を強く混入させすぎはしないか。という言葉にあるように、読み終えるまでどんな話なのか全くわからない不安と好奇心を駆り立てる構成になっています。
『うるはしみにくし あなたのともだち』澤村伊智 https://amzn.asia/d/8Jc2aXu
安心安全の澤村印。ホラーなんだけどもはや社会派小説と言っても過言ではないと思う。澤村伊智は本当に、弱いものや軽視されているものをすくいとるのが上手いです。そこにきちんと批判的な視点を込めるのも、全く別の視点で見せるのも上手い。プロ作家に上手いというのもあれなのですが、本当に読みながら最高〜!と思いました。
『催眠 上・下』『契約 上・下』『交霊 上・下』ラーシュ・ケプレル (絶版)
ヨーナ・リンナ警部シリーズの北欧ミステリ。北欧ミステリ大好き人間ですが、これは群を抜いて面白かったです。作中の仕掛けも伏線も構成もどこをとっても面白い。残念ながら初期のこの三作は絶版となっています。本なんですぐ絶版になってしまうん? 続きは扶桑社から出ています。こちらは購入可能。わたしはまだこの三作しか読んでいませんが、『交霊』の終わり方が大変良かったので続きも近々購入予定です。
『キオスク』ローベルト・ゼーターラー https://amzn.asia/d/acsGLLJ
ウィーンでキオスクの店番をする少年の物語。時は1937年、ナチズムが台頭してきた時代のウィーンに生きた一人の少年の成長譚なのですが、最初の方でフーンと思っているとあれよあれよと物語の中に引き込まれてしまいます。ぜひ最後に向かってたたみかけるような文章の波に揉まれてください。
『国語教師』ユーディト・W・タシュラー https://amzn.asia/d/7AAfXur
国語教師の女性と有名作家の男性のやりとりの形で進む物語。この二人は元恋人で、男性の方のぐいぐいくる感じに最初ウッとなるのですが、理性的な女性の返答に、お互いに交わしていく「物語」に、明かされていく過去に、どきどきしながら読み進められます。「言葉」と「対話」がどれだけ人間関係に重要なことなのかをずっと問い続ける作品です。
『夜間旅行者』ユン・ゴウン https://amzn.asia/d/bJkrPwV
ダークツーリズムを通して人間が働く意味や細分化されすぎた仕事で会社の歯車になってしまう人間の皮肉を痛烈に描いていると思います。主人公ヨナが「会社の部品」でなく「ひとりの人間」であることを選択した時訪れる結末とは。これを読むと物語を読むことは一種の野次馬であることではないのかと考えてしまいます。
『“少女神”第9号』フランチェスカ・リア・ブロック https://amzn.asia/d/1aOeTZt (絶版)
はじめは少しとっつきにくい感じがありましたがのめり込むと一気に駆け抜けるように読めた短編集。くくりとしてはYAにあたるもよう。どの話にも当然のようにマイノリティが登場し、特別扱いされるわけでもなく、ただそこにいることを肯定してくれる。カルト的人気を誇るというけれど、これが人気で読み継がれていることはある種の希望のようにも思えます。
以上。
記憶に残っている本を列挙してみました。やはりというか、下半期読んだ本のほうがよく覚えているかんじでした。でも今年初めに読んだ本を覚えているのはけっこうすごいことです(わたしにとっては)。来年の読む本の参考にでもしてください。
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